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黒岩涙香の巌窟王、鉄仮面、白髪鬼、野の花の口語訳、青空菜園、野鳥・花の写真、ピアノ、お遍路のページです

鉄仮面134

鉄仮面

ボアゴベ 著  黒岩涙香 訳  トシ 口語訳      

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                 第百二十四回

 大胆なブリカンベールの企ても、九分までうまく行ったところで駄目になり、鉄仮面を救い出すことは出来なかった。鉄仮面はこれから八日間を要して、セント・マールスに護送されてパリに着き、1698年11月18日をもって再び大牢獄バスチューユに入れられた。これは実に鉄仮面が先に牢獄に入れられてから二十六年目になる。

 バンダはこれと時を同じくして、パリに来ることが出来なかった。途中でブリカンベールの肩の傷を治療するため、およそ二ヶ月余りを費やし、ブリカンベールの傷がようやく治るのを待って、翌年の二月の初めに、ブリカンベールと一緒にパリに着いた。一度国王に自分の罪を許され、何処に住んでも良いことになっていたが、センヌの別荘を襲ったことが、あるいは自分達の仕業と思われ、再び疑われているかも知れないので、注意することに越した事はなかった。

 前とは違って、今は、オリンプ夫人、バイシンもパリを去っており、今はこの土地に一人の知っている人もいないので、どうしたら良いだろうと考えたが、なお鉄仮面を救い出す目的を、捨てていないので、とにかくバスチューユからそんなに遠くない、教会に潜んでいるのがよいだろうと、ブリカンベールに捜させると、ここに不思議と言うか、先頃まで自分が修道尼のようにして隠れていた、あのブロボン街道の教会の長老ギロウドと言う人が、セント・ポール寺院に引き移っていることを調べてきた。

 バンダは数年の間この長老を父のように敬っていたので、早速又その教会に住まいを定めて、朝夕、モーリスの冥福を祈りながら、ひそかにバイシンに当てて、センスの別荘での失敗の様子を知らせ、もはやかねて約束していた毒薬の外、何の考えも浮かばないので、なるべく早く毒薬を調合して送ってほしいと、言ってやったところ、その翌年の春になって、バイシンからようやく毒薬と解毒薬の二品を、送って来た。そして、この二品に添えた手紙には下のような文があった。

 「この薬は私が腹心の者と計って、死刑に決まったパルマー国の囚人に試し、一度殺してまた巧みに、生き返らせることが出来たものなので、決して心配はいりません。鉄仮面に毒を飲ませ、彼が死んで葬られたら、四十八時間以内に堀出し、解毒剤を飲ませれば、生き返ることは間違い有りません。

 なお、私は自分から忍び込んで行き、力を合わせるつもりでいましたが、私が前にルーボアやナアローに毒薬を送ったことが、フランス朝廷の疑うところとなり、あれから後、両国の間に何となく敵意が出てきて、ひそかに戦の用意をする有様なので、私は忍んで行くことが出来なくなりました。ただし、鉄仮面を救いだした後はすぐに当国に来るように、云々」

 バイシンが来れないことは残念ではあるが、ただ、幸いなことはあのコフスキーが今もなお、セント・マールスの気に入られ、バスチューユに使われていて、時々バンダの所を訪ねて来ることも有るほどなので、コフスキーの力でこの事ができないはずはないと、ある時、ひそかにコフスキーにこの薬を渡し、機会を見て鉄仮面にこの薬を与えることにしたが、何しろ大秘密の囚人で、なかなかコフスキーも、近寄ることが出来ずに年一年と空しく過ぎて、ついに五年目の末の1703年の十一月となった。

 この間、鉄仮面はどの様にしていたかと言うと、あのセント・マールスの短銃で何処かを撃たれたと見え、パリに着いてから数カ月の間は医師の手当を受けていたようだったが、その後、傷も治ったと見え、日曜日の説教室には、他の囚人と同じように引き出されることになった。

 最も、日曜日の送り迎えは、受持ちの者があって、コフスキーの役目ではないのでコフスキーは一度もその姿を見ることが出来なかった。ただ、その役目の者をだましていろいろと聞き出すだけだった。

 とにかくコフスキー自らその送り迎えの役目に用いられる事にならなければ、あの薬を渡すことが出来ないので、コフスキーはひたすら送り迎えの役につけるように心がけていると、五年の辛抱も無駄ではなく、その十一月の初めから、あの番の一人に加えられたので、いよいよその時が来たと喜び、早速バンダとブリカンベールにもその事を知らせに来た。

 今までの計画はことごとく、今一息の所で食い違ったが、今度ばかりはよもや間違いは起きないと確信し、首尾良く毒薬を渡して鉄仮面がこれを飲めば、死なないはずはなく、死にさえすれば葬られないと言うことはない。

 葬られた者を掘り出し、これを生きかえさせれば、誰からも疑いを受けない中に、バルマ国に逃げて行くことは、非常にたやすいことだと、バンダ、ブリカンベールの両人は11月1日から日曜日の来るのを待っていた。
   
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