aamujyou75
噫無情(ああむじょう) (扶桑堂 発行より)(転載禁止)
ビクトル・ユーゴ― 作 黒岩涙香 翻訳 トシ 口語訳
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噫無情 仏国 ユゴー先生作 日本 涙香小史 訳
七十五 第一~第二の仕事
けれど自分の身に、外に為すべき事が有る。第一職業を捜して、食うだけの道を開かなければ成らない。第二には前から捜して居る、手鳴田軍曹の行方をも捜し続けなければ成らない。是れは既に、父の遺言書に記して有るモントフアメールへ行き、「旅館」と言うのを尋ねたけれど、夙(とく)の昔に閉店し、多くの借金取りがその主人の行方を探して居るけれど、更に手掛かりが無いとの事だけが分かって居る。第一も第二も随分困難な仕事である。
初めのうちは、持って居る時計を売り、着て居る外套を脱いだりして生活して居たが、少しの間に売る物も脱ぐ物も無くなったので、成る丈安い宿を捜して、遂に町はずれのホピタル街の果てに在る、ゴルボー館と言う所に下宿した。
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