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野の花(前篇)

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トーマス・ハーデー著  黒岩涙香 訳 トシ口語訳

野の花

          十六 「主人に似た女中」

 そのことは、今までの侍女が親の病気で暇をとったので、その代わりとして、ロンドンの新聞に募集広告を出した。品子が言うには、大勢の申込人を一々自分で面接して、見分けなければならないと言うことなので、一々会って見た。

 いずれも、立派な貴婦人達の褒め言葉の手紙やら、精勤証書の様な物を山ほど取り出して、自分の長所を並べたが、中に一人、そのような品物の最も少ない者が、澄子の気に入った。名は浅原粂女というのだ。親もなければ、身寄りにもこの頃死なれて、この世に唯一人となったため、奉公するのだということで、いくらかはその憐れむべき様子に、心が動いたのだろう。なにしろ気に入った。年も自分より少し上なだけである。

 ところが、これを見て品子は、侍女の姿が主人に似ているのは、置くものではないと言って反対した。侍女が主人に似るというのは、主人が侍女に似るというのと、大した違いはない。非常に失礼な理由だ。けれど、幾らかは事実で、奉公などする者には珍しく、体が澄子のように優しくできていて、顔は勿論違うが、髪の毛が特に良く似ている。

 もし、澄子と同じ着物を着せて、後ろからでも見たら、随分澄子に見間違われただろう。「なぜ、主人に似た侍女は置くものではないのでしょう。」「貴方は知らないでしょうが、貴族には色々貴族相応の、言い伝いがあるのです。自分の妹や姉のように見える侍女は置くものでないと。」「それだけのことなら構いません。一番気に入ったからこれを置きます。」

 ついにこの女を置いた。果たして自分に似た女を置くもので無いか、否かは後で分かる。ほとんど分かりすぎるほどに分かる。

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