鉄仮面100
鉄仮面
ボアゴベ 著 黒岩涙香 訳 トシ 口語訳
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下編(序)
正史実歴 鉄仮面 下編
序
仮面をつけて或は敵を打ち負かし、或は強盗を追い払うなどはいつも娯楽作者の得意とするところで、一時は拍手を得るが、つまりは子供が般若の面を見て恐れ、ひょっとこの面を見て笑うのと同じで、どちらも大した違いはない。しかしながら涙香が書いているこの鉄仮面ほど不可思議なものはない。
普通の仮面は場合に応じて一時の娯楽を提供したり、策略に使われるだけだ。三十年もの長い間牢獄につながれしかも一時もこれをはずさない。もちろん鉄仮面の犯した犯罪はたぶん国事犯だろうとは推察出来るがその罪人の身分名前についてはほとんど何も分からないばかりか、あのバスチューユの牢獄で牢死したのにそれが何者なのかも分からずじまいという。
上編は既に出版されたが読者にとっては五里霧中にさまようのと同じで鉄仮面が誰なのか見極めずに不審疑惑を残したまま巻を終わって仕舞った。その残念さは察して余り有る。いまこの編のクライマックスになって初めてどんな事だったのかを知ることが出来るだろう。著者もここまで来てはもう天狗の面をはずして今まで読者を迷わせていた罪を謝ることだろうと想像して、岡目の面をかぶりながら舞踏家ならぬ作者の真似をして序の注文に応じて太鼓をたたいてはやし立てているのです。
明治二十六年五月 竹葉舎晋升
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