巌窟王、鉄仮面、白髪鬼、野の花、青空菜園、晴耕雨読、野鳥、野草

黒岩涙香の巌窟王、鉄仮面、白髪鬼、野の花の口語訳、青空菜園、野鳥・花の写真、ピアノ、お遍路のページです

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トシのウォーキング&晴耕雨読

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メロンとゴーヤ


このウェブサイト(ホームページ)はウォーキング、ウォーキングで出会った花、野鳥、黒岩涙香の小説の私の口語訳、その他を掲載します。

黒岩涙香の作品の詳細は黒岩涙香作品集でごらんください。

現在進行中の黒岩涙香の作品

8月21日 黒岩涙香の作品の16作目「女庭訓(おんなていきん)」を現代文に直したものを連載開始しました。

毎回初めの日はここに掲載し、次の日に「女庭訓」のページに移します。

新聞「萬朝報」に明治28年(1895年)12月 8日から明治29年(1896年)3月 4日まで連載されたもので、作者不詳の訳です。

原文が難しい漢字や漢字の当て字を多く使っていること、旧仮名表記なので、現在の漢字や仮名表記に直しました。

女庭訓  作 不詳  涙香小史 訳述  トシ 口語訳

画面上部の文字サイズの大をクリックして大きい文字にしてお読みください

     女庭訓 作 不詳  涙香小史 訳述
         
         第三回 二人の生い立ち

 今の身に取り十磅(ポンド)は肝を潰すほどの大金ではあるが、我が子を育てる用意と聞いては、心嬉しき親の情、如何ほど辛い事を為しても、必ず調達しようと言うのは無理は無い。
 しかしながら安穂が、
 「たとえ親代々の敵、富淵金造にさえ頭を下げても。」
と言うのを聞いて、文子は悸(どき)りと身を震わせ、我知らず、
 「エ、富淵」
と問い返すように口走った。

 安穂は周章(あわて)て、
 「ナニ驚く事は無いよ、親代々の敵(かたき)と言っても、何もこの国に居る人では無く、私が生まれない先に印度へ行き、カルカッタ府とやらで商売をして居るそうだ。幾等私が貧乏をしても、まさか親の敵とも言うべき人に金は借りられない。今言ったのは唯だ譬(たと)えに引いた丈の事サ。此の十磅(ポンド)の金は、親の敵に頭を下げるほどの辛い想いをしてでも拵(こしら)えると、唯だ決心を示したのサ。」

 文子は今まで富淵金造と我が夫、田守安穂は何の縁も何の由縁(ゆかり)も無く、全くの他人に違いないと思って居たのに、今親代々の敵と聞いては、少し心に催して居た望みも絶え、残り惜しい気がさせられるので、それと無く言葉を廻し、
 「ダッてその後、印度から帰って来たかも知れないでしょう。」
 安「それは如何(どうか)は分からない。私とは勿論音信不通で、イヤサ私はその人の顔さえ知らず、唯だ知って居るのは、その人が昔し私の親父の財産を横領し、私の家を零落させて、自分が非常な金満家に成ったと言う丈の事サ。」

 文子は何とかして此の二人の間を丸く治める見込みは無いだろかと思い、安穂の心を引こうとする様に、    
 「では幼い頃から貴方はその人を憎んで居たのですか。」
 安穂は今もまだその憎さを忘れる事が出来ないと言う様に、殆ど顔の色まで変え、

 「憎んだとも。今でも私は金造を八つ裂きにして、その肉を喰らうても飽き足らない程に思う。」
と両の拳(こぶし)を握ったので、文子は到底我が夫と金造翁とを、和合させる見込みは無いと、秘かに非常に失望して無言(だまり)込んだが、それからは唯だ何事をか思案するだけだった。

 このようにして翌朝となったので、安穂は何うにか十磅(ポンド)の工面をしなければと、何時もより早く起き、是と言う当ては無いけれど、寒い朝風を事ともせず宿を出て行った。

 抑(そもそ)も此の夫婦は如何なる身の上なのだろうと問うてみると、既に一通りは分かったことと思うが、妻文子はヨルク州赤城村(レッド・カスル)の産にして、早く父母を失い、二人の妹と共に花添露伯と言う伯父に養われていた。

 女学校に入り、教師その他の人々から、此の綺緻(きりょう)さえ有れば、後々の出世は思いの儘(まま)に違いないなどと褒められるのを頼りに、自ら学校をば卒業したなら、昔話にでも有る様に、何所からか貴公子が現れて来て、私を立派な儀式の場所に連れ行って、非常に華々しく婚礼し、浮世を夢よりも楽しく送られる事の様に思い、一心不乱に勉強をし、第一等の成績でその学校を卒業した。

 とは言うものの、昔話の貴公子も現れて来ず、再び伯父の許に厄介となって居たが、才学容貌兼ね備わった身で、何時までも片田舎に埋まって居るのは惜しいものだと、人も言い自分も思って、或る時新聞紙の広告に、
 「女学校を卒業した女にして、品行宜しい者が在れば、充分の給金を以て或屋敷に家庭教師として雇い入る可し。」
と有るのを読み、

 之が若しや身を立てる糸口に成るかも知れないと、遥々(はるばる)都に出て来て、長谷田夫人と言う物持ちの邸に住み込み、数人の子供の教育を引き受けたが、一年二年と過ごしても、身の定まる見込みは無く、唯だ夏蝿(うるさ)い主家の子供に、日々無理を言われるだけで、自分でさえもまだ子供同様の年頃なので、殆ど辛抱も仕切れないほど辛い事に思う折り柄、

 時々その家へ遊びに来て居た田守安穂と言う少年と、思い思われる事とはなり、二人とも初恋の情火熾(さ)かんにして、深く後々の事までには思い至る事も出来ず、暇を取って夫婦と為ったものだ。又田守安穂も文子と同じ頼り無い身ではあるが、僅かばかり親の遺産が有ったが為め、それを持って外国に遊学し、語学一通りを卒業して国に帰った。

 愈々(いよいよ)事業を求める前に、更に自分をば煅(きた)え固めようとして、志願して兵士と為り、一年の役を終えて、未だ事業にも取り掛かって居ない前に、フト文子を見染め、片時もその傍を離れる事が出来ないほどの想いがする迄に到ったことから、この様な女を妻としたならば、事業の上にも如何ほどか励みになるか知れないと、その意を明かして夫婦とは成ったが、二人とも外に目上の人も無い気楽さに、蜜月(ハネムーン)の旅に上り、蓄えの有る間は、夢中の有様で先から先に行き、

 漸く旅費の尽きたのに驚き、愈々事業を初めようとして帰って来て見たが、世はそう容易に渡ることが出来るものでは無い。文子が心に描いていた、昔話の目出度い境遇は扨(さ)て置いて、今現在の事が話にも成らないほどの苦しい此の有様に陥っているのだ。

 安穂は十磅(ポンド)の工面に出で行ってから、如何なる事に直面することに成っただろう。

第三回 終わり

前回までは「女庭訓」のページに移動

「女庭訓(おんなていきん)」のあらすじ

 イギリスの田舎に育った三人姉妹の長女文子は美貌の持ち主で、出世しようとロンドンに出て家庭教師を始める。
 そこで出会った田守安穂という若者が美貌の文子に一目ぼれし結婚する。一家を構える資金も無いままの結婚で、忽ち困窮に襲われ、その日の暮しもままならなくなる。そんな時に田舎から、印度で事業をしていた叔父金造翁が莫大な財産を持ち帰って来て、文子を呼び寄せている行って来る。金造翁の面倒を見れば死後莫大な財産が遺産とし貰えると期待し、苦しい結婚に見切りをつけ、数年我慢をして莫大な財産を持ち帰れば、夫も許してくれるだろうと夫を置き去りにして、金造翁の許へ行く。

登場人物は例によって日本名になっています。

庭訓(ていきん)とは家庭教育というような意味。

雨読のページ

黒岩涙香の作品

◎明治の言葉、漢字の当て字、文体なので、なるべく原文の調子を崩さない様に、誰でも読める様に直しました。

既にUP済みの作品

1.鉄仮面 ・・・鉄仮面は誰か

2.白髪鬼 ・・・白髪鬼となり復讐へ

3.野の花 ・・・田舎育ちが貴族に嫁いで

4.巌窟王 ・・・泥埠の土牢から脱出して 

5.如夜叉 ・・・「まあ坊」憎さに娘を傷付けてしまう三峯老人 

6.妾(わらは)の罪 ・・・殺人の汚名を着せられる古池華藻嬢 

7.嬢一代・・・・「血を見る敵」と言い残して立ち去ったイリーン嬢。

8.武士道・・・・敵方の縄村中尉に恋してしまう弥生。

9.悪党紳士・・・誰だか分からない敵におびえるお蓮。

10.捨小舟・・不倫を疑われ男爵家を去る園枝。

11.美人の獄・・・夫毒殺の容疑で逮捕される雪子。

12.島の娘・・・島の娘が発奮して自分を磨き、思いを遂げる。

13.噫無情・・・幾等善行をしても報いられない生涯を送る戎瓦戎(ヂャンバルヂャン)。

14.活地獄・・・200万フラン(28億円)を贈るという遺言状を残された柳條。遺言状の獲得を廻って争いが。

15.決闘の果・・・いつの世にもある美貌の毒婦の元祖森山嬢

詳しくはここから黒岩涙香作品集

「ゲストとトシのフォトサロン」

「ゲストとトシのフォトサロン」を開設しました。毎日更新しています。いろいろな写真をご鑑賞ください。

Ⅰ. H.平野のフォトギャラリー

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NO.126 2017年7月15日 幕張海岸

幕張海岸7.15

makuhari7.15 7月15日の「幕張海岸」をもっと見る方はここからどうぞ

NO.125 2017年7月14日 幕張界隈

幕張界隈7.14


幕張界隈7.147月14日の「幕張界隈」をもっと見る方はここからどうぞ

NO.124 2017年7月 8日 成田祇園祭

成田祇園祭7.8


成田祇園祭7.87月 8日の「成田祇園祭」をもっと見る方はここからどうぞ


  
Ⅲ. トシの花図鑑
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