巌窟王、鉄仮面、白髪鬼、野の花、青空菜園、晴耕雨読、野鳥、野草

黒岩涙香の巌窟王、鉄仮面、白髪鬼、野の花の口語訳、青空菜園、野鳥・花の写真、ピアノ、お遍路のページです

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トシのウォーキング&晴耕雨読

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メロンとゴーヤ


このウェブサイト(ホームページ)はウォーキング、ウォーキングで出会った花、野鳥、黒岩涙香の小説の私の口語訳、その他を掲載します。

黒岩涙香の作品の詳細は黒岩涙香作品集でごらんください。

現在進行中の黒岩涙香の作品

8月21日 黒岩涙香の作品の16作目「女庭訓(おんなていきん)」を現代文に直したものを連載開始しました。

毎回初めの日はここに掲載し、次の日に「女庭訓」のページに移します。

新聞「萬朝報」に明治28年(1895年)12月 8日から明治29年(1896年)3月 4日まで連載されたもので、作者不詳の訳です。

原文が難しい漢字や漢字の当て字を多く使っていること、旧仮名表記なので、現在の漢字や仮名表記に直しました。

女庭訓  作 不詳  涙香小史 訳述  トシ 口語訳

画面上部の文字サイズの大をクリックして大きい文字にしてお読みください

   女庭訓 作者 不詳  涙香小史 訳述

   第二十九回

 話は代わって、田守安穂は妻文子が何うあっても金造翁の許を離れないと言い張るのに愛想を尽かし、且つは豪州に居た頃から、夜と無く日と無く想い続けた我が愛児が、生まれて間も無く死去したとの事に落胆し、狂った様に翁の家を走り出たが、それから直ちに田守荘の我が家へ帰った。

 しかしながら安穂は全く此の世の望み尽き果てた心地がして、生きて居る甲斐さえ無い迄に思い、鬱々(うつうつ)として気が晴れない。家に招いて有る客達に対しても、笑顔を示す事が絶えて無くなったので、客も何かの心配が事あるに違いないと察し、一人去り二人去り、唯だ彼の小畑時介の外は、一週間と経たないうちに皆去ってしまった。

 だから安穂の家の淋しさは、宛(まる)で火の消えた有様で、安穂は殆ど一語をも発しない程なので、或る時介は見るに見兼ね、野外へでも運動に行くのが好いだろうと熱心に説き勧めたところ、安穂はその気に成った様で、直ちに厩(うまや)から馬を出し、之に打ち乗って出て行ったので、時介は庭に居て其の後ろ姿を見送ると、不思議なことに、日頃馬を大事にして、自分の事の様に労(いた)わる安穂が、今日は力の限り、続け様に鞭を当て、馬を狂気の様に怒らせて、疾風の勢いで山の方を指して馳せさせて行った。

 アレ程早く山路に馬を馳せては、投げ落とされることは確実で、命にも関わることは間違いない。若しや彼れは落胆の余りに、自ら死ぬ気に為ったのではないだろうかと、時介は心も穏やかではなかった。自分も馬をを引き出して之に乗り、その後を追って出たが、早や安穂の姿は見えない。

 しかしながら行く道は一筋なので、馳せに馳せて三里ほど隔たった一村に行くと、大道の傍(かたわ)らに流れ来る水に架けた、一軒の水車屋があった。此の家に近所の人が多数集まって、何やら心配気に評議する体なので、若しやと思い馬を駐(とど)め、入って行って様子を聞くと、今しも此の先で馬から落ちて大怪我をした紳士がある。呼吸も絶えて、生死さえはっきりしないので、此の家へ舁(かつ)いで来て介抱している。今に近郷の医者が来るはずだとの事である。

 さてはと時介は身を震るわせ、座敷に上がってその怪我人を見ると、果たせる哉田守安穂で、頭を酷く打った者か肩の辺まで血に塗れ、全く気絶して生気も無い。
 幸いにして間も無く医師が来て、此の夜一宵介抱すると、息だけは吹き返えしたが、まだ人事不省である。時介は何うにかして、田守の荘に連れ帰り度いと思ったが、今身体を動かしては回復の見込みは無いと、堅く医師が止めるので、仕方なくこの水車屋の最も奥まった一室を借り受け、自分は毎日田守荘から通う事と為った。

 此の家は非常に家族が少なく、主人である五十余りの老夫と、その娘であるに違いない二十歳ばかりの田舎には珍しいほど美しい女と二人である。外に此の女を、
 「阿母(かあちゃん)」
と片語(かたこと)交じりに呼ぶ満三歳程に見える男の子一人、都合三人で、その他に雇女雇男各々一人である。

 此の美しい娘は、名をお倫と呼ばれ、その子と見えるのは唯だ太郎と呼ばれる。お倫は此の村で、多少看護の経験があるとの事で、医師の勧めに由り安穂を看病する事となったが、安穂は唯だ息だけ吹きを返したと言う迄で、幾日もの間、少しも正体が無いので、勿論この様な美人に介抱されて居る事は知らない。

 唯だ時介だけは、安穂の枕辺に在ってお倫を相手とし、見るとも無しにお倫の様子を見ていると、顔の美しさと共に心も又美しく、病人を看病する傍にその子太郎を護り育て、双方に心を配って何一つ行き届かないと言う事が無い。日を経(へ)るに従って、時介とは親しさを増して行った。

 病人が眠って居る暇には、一言二言小声で、短い雑話を試みる程と為ったが、時介は初めから、此の女が子が有って夫が無いのを怪しんで居たので、、或いは此の様に年が若いのにも似ず、早や夫に死に分れたのだろうか。まさかこの様な温良な女が、私生児を生み落とす様な事は無いだろうと思い、幾度か問おうとしたけれど、若し夫に死に分れた者ならば、問うては却って過ぎた悲しみを思い出させる元と為るに違いない。

 それとも私生の児ででも有ったならば、問うのは辱める様な者で、どちらにしても罪が深いと、自ら控えて一月の余を送るうち、病人安穂は漸く傷も癒え、記憶喪失の病にでも為らないかと気遣われた其の脳も、次第に人事を弁(わきま)える程と成って来た。

 一旦恢復の端に向かうと、血気盛んな身だけに、其の進みも速やかで、間も無く部屋の中を独り歩む事が出来る迄に至った。時介がお倫と親しむ様に、安穂は又其の子と見える太郎と親しみ、妻文子の生んだ我が子も、男の子だと言うので、今頃は丁度太郎と同じ位成長して居る筈だなどと思い、何とか此の子を貰い受ける事は出来ないだろうか。

 出来なければ、せめて五、六年も借り受けて、我が傍に置けば、我が身も其の愛に引かれ、過ぎた昔の悲しみを忘れ、妻無く子無くとも此の世の味気無さをこれ程までには感じないだろうになどと思い、或時お倫の入って来たのを見、今まで親切に介抱せられた礼などを述べ、其の後で、

 「此の子は貴女の本当のお子ですか。」
と問うた。お倫は恥ずかしそうに、パッと其の顔を赤らめたが、直ちに又悲しそうに、打ち沈み、
 「未だ夫を持った事の無い私に、何で子など有りましょう。此の子は」
と言い掛けて口籠るので、
 安「貰い子ですか。」
 倫「ハイ貰い子の様な預かり子の様な者です。今でも私は此の子を預った時の事を思うと、悲しくなります。若い母御がアノ様に零落して」
と独言の様に話し出した。

 

 

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「女庭訓(おんなていきん)」のあらすじ

 イギリスの田舎に育った三人姉妹の長女文子は美貌の持ち主で、出世しようとロンドンに出て家庭教師を始める。
 そこで出会った田守安穂という若者が美貌の文子に一目ぼれし結婚する。一家を構える資金も無いままの結婚で、忽ち困窮に襲われ、その日の暮しもままならなくなる。そんな時に田舎から、印度で事業をしていた叔父金造翁が莫大な財産を持ち帰って来て、文子を呼び寄せている行って来る。金造翁の面倒を見れば死後莫大な財産が遺産とし貰えると期待し、苦しい結婚に見切りをつけ、数年我慢をして莫大な財産を持ち帰れば、夫も許してくれるだろうと夫を置き去りにして、金造翁の許へ行く。

登場人物は例によって日本名になっています。

庭訓(ていきん)とは家庭教育というような意味。

雨読のページ

黒岩涙香の作品

◎明治の言葉、漢字の当て字、文体なので、なるべく原文の調子を崩さない様に、誰でも読める様に直しました。

既にUP済みの作品

1.鉄仮面 ・・・鉄仮面は誰か

2.白髪鬼 ・・・白髪鬼となり復讐へ

3.野の花 ・・・田舎育ちが貴族に嫁いで

4.巌窟王 ・・・泥埠の土牢から脱出して 

5.如夜叉 ・・・「まあ坊」憎さに娘を傷付けてしまう三峯老人 

6.妾(わらは)の罪 ・・・殺人の汚名を着せられる古池華藻嬢 

7.嬢一代・・・・「血を見る敵」と言い残して立ち去ったイリーン嬢。

8.武士道・・・・敵方の縄村中尉に恋してしまう弥生。

9.悪党紳士・・・誰だか分からない敵におびえるお蓮。

10.捨小舟・・不倫を疑われ男爵家を去る園枝。

11.美人の獄・・・夫毒殺の容疑で逮捕される雪子。

12.島の娘・・・島の娘が発奮して自分を磨き、思いを遂げる。

13.噫無情・・・幾等善行をしても報いられない生涯を送る戎瓦戎(ヂャンバルヂャン)。

14.活地獄・・・200万フラン(28億円)を贈るという遺言状を残された柳條。遺言状の獲得を廻って争いが。

15.決闘の果・・・いつの世にもある美貌の毒婦の元祖森山嬢

詳しくはここから黒岩涙香作品集

「ゲストとトシのフォトサロン」

「ゲストとトシのフォトサロン」を開設しました。毎日更新しています。いろいろな写真をご鑑賞ください。

Ⅰ. H.平野のフォトギャラリー

H.平野のフォトギャラリーへはここから入れます。(青文字をクリック)

NO.126 2017年7月15日 幕張海岸

幕張海岸7.15

makuhari7.15 7月15日の「幕張海岸」をもっと見る方はここからどうぞ

NO.125 2017年7月14日 幕張界隈

幕張界隈7.14


幕張界隈7.147月14日の「幕張界隈」をもっと見る方はここからどうぞ

NO.124 2017年7月 8日 成田祇園祭

成田祇園祭7.8


成田祇園祭7.87月 8日の「成田祇園祭」をもっと見る方はここからどうぞ


  
Ⅲ. トシの花図鑑
トシの花図鑑はここから入れます。(青文字をクリック)

''part.1 江戸川周辺に咲く花 (途中の花)の掲載数は367になりました

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