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第十七作 人外境(黒きビーナス) (転載禁止)
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アドルフ。ペロー 作 黒岩涙香 翻案 トシ 口語訳
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新聞「萬朝報」に明治29年(1896年)3月 7日から明治30年(1897年)2月26日まで連載されたもので、作者 アドルフ・ペローの「黒きビーナス」の訳です。
例によって登場人物は日本人名に成って居ます。
原文が難しい漢字や漢字の当て字を多く使っていること、旧仮名表記なので、現在の漢字や仮名表記に直しました。
現在ほとんど使われて居ない漢字も所によっては残しました。
こんな漢字も有るのかと思わせるほど沢山の漢字が使われて居ますが、大部分は仮名や当用漢字に直しました。
難しい漢字の熟語は読みずらいかも知れませんが、文中に()と《》で読みと意味を記しました。
下の文字サイズの大をクリックして大きい文字にしてお読みください
人外境(にんがいきょう)のあらすじ (1)
芽蘭(ゲラン)男爵夫人がイギリスに帰っている間に夫、芽蘭男爵がアフリカ探検に出発し、生死不明の行方不明になってしまった。世間では芽蘭(ゲラン)男爵は死んだものと見做されている。
芽蘭(ゲラン)男爵夫人は心の整理をするため夫男爵が死んだ場所を確認したいと思い、アフリカに行くことにする。
ゲラン男爵夫人に思いを寄せている三人の紳士に、アフリカに一緒に行き、ゲラン男爵の死を確かめたら、三人の中の誰かと結婚すると宣言し、同行を求めた。
三人の中の二人が同行することを申し出、困難なアフリカ探検に同行することになった。
この「人外境」の話が荒唐無稽な話に思えたので、話の信憑性を確かめるため、リビングストンの「リビングストン探検記」やスタンレーの「暗黒大陸」を読んで見た。リビングストンの探険は1850年代、スタンレーのアフリカ探検は1870年代だった。この「人外境」が書かれたのが1890年代で小説に創作した部分も多いと思われるが、「人外境」に書れているアフリカの実態は「リビングストン探検記」、スタンレーの「暗黒大陸」に書かれている事とあまり変わっていなかった。
今から150年前のアフリカはこんなだったのかと思う事ばかりだった。
152回と長い小説だが1870年代のアフリカの様子が分かる話なので、コロナ騒動で外出自粛とも相まって訳す事にした。
1870年代のアフリカはこれくらいの理解度だったのかと再認識した。
人外境(にんがいきょう)のあらすじ(2)
芽蘭(ゲラン)男爵夫人は心の整理をするためアフリカに夫男爵の死に場所確認と、その墓参りに行くことにする。
ゲラン男爵夫人に思いを寄せている茂林、平洲は芽蘭夫人に付いてアフリカに一緒に行く事にする。
茂林はアフリカに一緒に行く医師として博打好きな寺森医師を取り込んだ。
アフリカに一緒に行くのは茂林、平洲、茂林の下僕與助、芽蘭夫人の侍女としての帆浦女、医師としての寺森と言うことに成った。
人外境(にんがいきょう)のあらすじ (3)
1872年10月14日芽蘭(ゲラン)男爵夫人の一行はフランスのマルセイユを出港し、7日目にエジプトのカイロに着いた。
目指すのは、カイロからスイズ運河を抜け、スーダンのハルツーム以南のアフリカだ。
フランスを出発した後、エジプトからスイズ運河を抜け、サウジアラビアのジッダに着いた一行はジッダの町を観光した。
ジッダを観光した後、與助は駱駝を連れたベドイン人がスイズで盗まれた與助の荷物を持参して居る事に気が附き、取り戻そうとしたが、却って捕らわれ拉致されて連れ去られてしまう。
下僕與助がベドイン人達に連れ去られたことを知った平洲は、馬を無理やり借り受け與助を助けに向かう。
人外境(にんがいきょう)のあらすじ (4)
ベドイン人達に連れ去られた下僕與助を取戻そうと、茂林は一人旅のベドイン人の馬を借り受け、與助の後を追う。
通訳亜利は、茂林が連れ去られた下僕與助を助けに、ベドイン人達を追って行った事を芽蘭夫人に伝えた。
芽蘭夫人はジッダのフランス領事に茂林、下僕與助の救出を頼むが断わられる。」
寺森医師、通訳亜利、ベドイン人、雇った現地人二人の計五人で茂林を追う。
ベドイン人に捕まって居た茂林は助けたが、下僕與助の行方が分からず、砂嵐で沙漠の砂に埋まってしまったという結論になった。
下僕與助の事は諦め、芽蘭夫人の一行はジッダから紅海を渡り、対岸のアフリカのスーダンのスアキンに渡った。
人外境(にんがいきょう)のあらすじ (5)
ジッダから紅海を横切りアフリカのエジプト領スアキンに渡り、いよいよアフリカの内地を目指す事となった。
スアキンからスーダンのハルツームに向かう沙漠で200人の黒人奴隷を連れている奴隷商人の一行に出会う。
黒人奴隷を家畜の様に扱う奴隷商人に義憤を感じた茂林達は奴隷を解放しようと奴隷商人と戦うことにする。
奴隷商人の中にどういう訳か與助が混じって居た。
人外境(にんがいきょう)のあらすじ (6)
スーダンのハルツームに着いた芽蘭(ゲラン)夫人はここで色々な人と会い、芽蘭(ゲラン)男爵についての情報集めていた。
一方茂林と平洲はそれぞれ、芽蘭夫人から声が掛からなくなっていたことに不信感を持って居た。
芽蘭夫人はアフリカ内地のモンパト地方出身の黒人から芽蘭男爵の手紙を受け取っていた。
その手紙は芽蘭男爵が1872年にボンゴーの先のモンパト地方で書いた手紙だった。
芽蘭夫人は今まで、芽蘭男爵が1871年10月にボンゴーという所で亡くなったという知らせを信じていたのだった。
芽蘭夫人は、アフリカに芽蘭男爵の墓参りに行った後、茂林、平洲両人のどちらかを夫にすると約束をして二人を同行させていたのだ。
芽蘭男爵がアフリカで今も生きて居ると信じた芽蘭夫人は、結果的に茂林と平洲を騙してアフリカに連れて来た事に成ったのを悩んで、二人をどうしようかと迷って疎遠にしていたのだ。
芽蘭夫人は芽蘭男爵が生きて居るので、茂林、平洲どちらかの妻に成るという約束が果たせなくなったので、二人にフランスに帰ってくれと言い渡した。
人外境(にんがいきょう)のあらすじ (7)
スーダンのハルツームに着いた芽蘭(ゲラン)夫人はここで夫芽蘭男爵からの手紙を受け取り、男爵がまだ生きているかも知れないという希望を持つ。
芽蘭男爵が死んだという前提で茂林と平洲に同行を求めていた芽蘭夫人は、茂林と平洲にパリに戻る様言い渡す。
芽蘭男爵の死んだ場所を特定すると云って芽蘭夫人に同行していた茂林と平洲は今更手ぶらではパリにには帰れないので、芽蘭夫人が同行を拒絶するなら、自分たちで探検隊を組織して芽蘭男爵を捜しに行くと言い出す。
芽蘭夫人は芽蘭男爵が生きているという事でも茂林と平洲が同道するというので、一緒に行動する事にする。
愈々アフリカの未開地に踏み込んだ一行は、アフリカの自然や原住民の風俗に触れるが、最初にやらかしたのは與助で、象牙と交換する為に原住民の娘二人をかどわかす。
帆浦女は茂林と平洲、寺森医師の誰に好意を持ったら良いか迷い、気分転換に出かけるが、木立の中を流れる川辺に行き着き、ツイ暑さも手伝って、川遊びをする気に成る。
帆浦女が川から上がると脱いでおいた着物が無くなって居た。猿が帆浦女の着物を持ち去っていたのだ。素っ裸で水遊びをしていたので、誰も居ないアフリカの原野でも、素っ裸で歩いて皆の所に帰るわけにもいかず困り果てる。
芽蘭夫人が孤独感から憂鬱病になり、沈み込んで仕舞ったのを見て、寺師医師が芽蘭夫人の憂鬱病の精神分析して、鬱の気を晴らすためのアドバイスをしようとする。
人外境(にんがいきょう)のあらすじ (8)
スーダンのハルツームからナイル川に沿って南下し、モンパトに着いた芽蘭(ゲラン)夫人はここの国王魔運坐に見初められ、妻にと望まれる。
芽蘭夫人を妹と云う触れ込みで魔雲坐王に紹介していた茂林は芽蘭男爵を芽蘭夫人の父親と言うことにして、父芽蘭男爵の同意が無ければ嫁にはやれないと主張する。
魔雲坐王は200人の妻たちを離縁し、芽蘭男爵に結婚の同意を貰うため、一行に同行する事にする。
一行について来た魔雲坐王はドモンダと云う土地で、家来が戦争もせずにだらだらついて行くのは拒否して故郷に帰ると言い出したと茂林に告げる。
茂林は途中での戦争や略奪は厳禁していたが、アフリカの未開地の習慣に従って、原住民との戦争を許可する。
魔雲坐王の兵士たちは戦争が出来る事に歯をカチカチと鳴らして喜んだ。戦争前に歯をカチカチと鳴らして躍り上がるのは人喰い時代の名残で、久しぶりに人が喰えるのを喜んでの事だという。
茂林達の加勢も有って魔雲坐王側がドモンダ人との戦争に勝利した。
戦争が終わった後、茂林は燃えているドモンダ人の小屋で今にも燃えそうな壁に貼られた文字が書いて有る紙を見つける。
貼られていた紙は芽蘭男爵が芽蘭夫人や故国の人へ書いた男爵の今までの行動録と心境だった。
人外境(にんがいきょう)のあらすじ (9)
死んだと思って居た芽蘭男爵が遊林台という女王が統治する国に捕らわれて居る事が判明した。
此の遊林台国は黒天女国とも呼ばれる女子の軍団の国で、強さ残酷さではアフリカ随一の国だと云う。
女王は輪陀(リンダ)という「黒きビーナス」とも称えられる美女だとのこと。
遊林台国にスパイを送り込み、遊林台国の国情や芽蘭男爵の様子を探らせることにする。
送り込んだスパイは芽蘭男爵からの手紙を持って無事帰って来た。
人外境(にんがいきょう)のあらすじ (10)
芽蘭男爵が遊林台の輪陀女王に捕らわれながらも、輪陀女王の教化に務めていた。
芽蘭男爵は妻たちが自分を救出するために此の遊林台国に来ようとして居る事を知らされる。
芽蘭男爵は自分を救いに来ても女王輪陀(リンダ)が許さないから無駄だと言う。
圧倒的な輪陀女王軍に敗北を覚悟して居た芽蘭夫人の方に天から降って来た様な援軍があった。
輪陀女王軍が軍神と崇めている巨大な軍神石が崩れ落ち、多くの兵士が下敷きになってしまったのだ。
迷信深い原住民の軍は軍神と崇めている巨大な軍神石が崩れ落ちたのに恐れ戦き戦意を喪失する。
自分の統治する国を滅茶滅茶にされた輪陀女王は実は芽蘭男爵に思いを寄せていたのだ。
恋しい人を奪われた輪陀女王は何所迄も一行を追って行く。
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